石垣島周辺はサンゴ礁によってできたリーフにより、多様で豊かな生態系が育まれ、沖縄県内でも屈指の漁場。日本有数のマグロの漁場としても知られています。
ここ石垣島に位置する八重山漁業協同組合では、マグロ延縄、曳縄、一本釣り、定置網漁、養殖業ではモズク、クルマエビ、魚類、海ぶどうなど幅広く漁協漁船漁業や養殖業が行われています。
ここで漁師として働く大浜益人さんに、仕事への心構えや労働環境について伺いました。
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幼い頃から海は身近「漁師になるのは自然な流れだった」
美しい地元の海を見ながら育ち、漁師になるのは至って自然な流れだった、という大浜さん。20代前半は産業廃棄物や建築関係の仕事をしていたそうですが、やはり海に関わる仕事がしたい、と漁師の道へ。
「母方が漁師の家系でした。また父は漁師ではないけれど船を持っていたので、とにかくよく海や浜辺で遊んでいましたね」と幼少期からとにかく海は身近だった様子。「叔父が漁師だったので、一緒に船に乗せてもらい色々と教わりました。次第に仲間も増え、付き合いも増えていく中で様々な漁の経験を積みました」
今はもずく漁が終わり、片付けの時期だという大浜さんですが仕事の内容は時期によりさまざま。マグロ漁に出れば2泊3日帰らないこともザラだといいます。不規則なうえにシケで漁休みの時には漁具や船の手入れを行うなど、業務内容は多岐にわたります。
体力勝負の仕事だからこそ、しっかりと休み体調管理することの大切さ
不規則な上に体力勝負。「漁師」という職業には体調管理も深く関わってきますがどのように気をつけていますか?との問いに「仕事を終えたらきちっと帰れる時に帰ることですね」ときっぱり。
「もちろん水揚げの時期や繁忙期は体力的な面でも相当きつい。いくらきつくても休めない時もあるし、その辺りの覚悟は必要です。だからこそ休める時はしっかり休むことも大切なんですよ」と続けます。
「オフの時はゴルフをしたり家族や仲間と過ごしたりしています!」と余裕のある時期はしっかりと自分時間を持てることも魅力。漁師さんのお仕事の意外な一面でした。
「大変な仕事ですが、意識してオンオフの切り替えを行なっています」とプライベートの時間に充電することの大切さを明かしてくれました。
危険な仕事だからこそ「チーム作りや風通しの良さ」に気を配り、漁の安全へ繋げる
「ありがたいことに若い方も入社してくれ、今は良い人材に恵まれています。19歳と27歳、あ、先日アルバイトしてくれた17歳の子もきてくれていています」と頼もしいメンバーの加入にほっと安堵の表情を浮かべる大浜さん。
「たまたま今回うちは確保できましたが、どこも厳しいですよ。皆さん人員確保には苦労されています」と人材不足の課題と常に隣り合わせだと言います。
「新人さんが入ったらとにかく皆で教えるようにしています。初めてだからできないのは当たり前。だからこそ、なんでも興味を持ち、挑戦する姿勢を持ってくれると嬉しいです。言われたことだけをやっただけだと伸びていかないですから」と自ら動くことも大切だと説きます。
「漁は大体3-4名で出るので、チームの雰囲気作りは重要です。基本的には楽しくやりたいと思っています。怒ったり萎縮させたりすることは逆に危険。海上で分からないことや判断がつきにくいことをきちんと口に出して確認できる、そんな信頼関係を築くことも漁の安全に繋がります」危険と隣り合わせだからこそ風通しの良いチームワークが必須と話します。
漁師になる上での心構えとは?辛い時こそ前を向く
「水揚げが上がらない時は本当に辛いですよ。良い時ばかりではありません。コロナ禍は最悪でした。でもなんとか続けていられることに感謝です。やりがいはあるし、基本的に楽しいです。悪い時は悪い、不可抗力の場合はこんなもんだなって思うしかない」と大変な時こそ気持ちに折り合いをつけ前を向く必要がある、と大浜さん。
最後に、漁師に興味のあるみなさんにメッセージをいただきました。「海が好きなら楽しくできると思います!やる気があれば体力に特段自信がなくても大丈夫ですよ。僕たちがしっかりと基礎から教えますから、まずはチャレンジ精神を持って来てくれたら嬉しいです!」
どこか不器用ながらも懐の深さが滲み出る大浜さん。紡ぐ言葉に嘘がなく、真っ直ぐな姿が印象的でした。