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インタビュー 果菜 根菜
更新日:2023.07.31

「みんなが働いて幸せになれる職場にしたい」仲間を大切にしながら農場のブランド化に挑戦 本山農場 本山忠寛さん

北海道のほぼ真ん中に位置する美瑛町。観光名所としても有名なこの町は、昼夜でも寒暖差が激しいため、広大な農地が広がっています。

この美瑛町で「本山農場」を経営している本山さんは、4人兄弟の長男として育ち、農家の4代目として弟さんと一緒に農場を運営しています。

現在、約140haの圃場でアスパラガスや玉ねぎを中心に、大玉トマトやピーマンも育てていますが、アスパラガスは美瑛町内の限られた土地でしか生産していない品種「ラスノーブル」で、今では全国から注文が届く人気商品に。

仲間である従業員を大切にしながら、農場経営を進めている本山さんに、お話しを伺いました。

親孝行がキッカケで決断した農家の道

幼い頃から家業を継ぐ意識はあったものの、本山さんが明確に農業をやろうと決意したのは高校生になってから。本山さんが小学生の頃は、農場経営がうまくいってなかったため、お母様も本山さんが農家を継ぐことに反対していたそうです。

次第に経営は回復しましたが、本山さんは将来を見据えて工業高校に進学。「家業を継ぐか、就職をするか、どちらの選択肢も選べるように進学先を考えました」。

しかし、この高校時代に農家になる決断した本山さん。

それまで「農家を継いでくれ」と言われたことはなかったものの、楽しそうに農業について話しかけてくるお父様を見て「これで継がなかったら親不孝だな」と思い、高校一年生の終わりに農家になる決断をしました。

農家を志すのであれば、仲間を作ったほうがいいというお父様のアドバイスを受け、大学は十勝にある北海道立農業大学校へ進学。

同級生は40名ほどでしたが、その時出会った仲間たちとは今でも悩みを相談したり、収穫した作物を物々交換したりと「財産ですね!」と言える交友関係が続いているそうです。

作物を作っただけでは売れない。“マルモ印のブランド化”の転機

お父様の代までは大規模経営をしていた本山農場。栽培する作物は変えていませんが、本山さんの代になってから変えたのが「面積の拡大」と「マルモ印のブランド化」です。

大学生の頃から「JAのみの販売ではなく、自分たちで販路を開拓していきたい」と考えていた本山さん。しかし、お父様の経営方針もあり、構想段階で止まっていました。

そんな中、「中国製ギョーザ中毒事件」が発生し、国産ニンニクの需要が高まったため、本山農場でもニンニクの生産を開始することに。

しかしながら、まったく売れなかったそうです。

「産地としてのブランドがないと売れない」ことに気づいた本山さんは、知人であるデザイナーの長岡さんに相談したそうです。

「長岡さんは妻が学生時代に通っていた古着屋の店長で、僕も学生時代に農業実習で着るつなぎを買いにいったことがあったんです。当時、長岡さんは十勝に農業専門のデザイン会社(ファームステッド)を立ち上げようとしていて、うちが十勝以外では第一号でした」。

長岡さんからブランド化を提案された本山さんは「祖父が使っていた古い金槌の柄に刻印されていた印をロゴにしたい」と相談し、ブランド化に着手。

Webサイトだけでなく、作業着や商品配送用のパッケージもデザインを統一し、現在では「いろんな方からロゴマーク見たよ!いいねっ!って言ってもらえるんです」とブランド化の成果を実感しているそうです。

現在でもすべてのデザインやマーケティングをファームステッドに任せているそうで、「だいたい長岡さんが提案してくれることがしっくりくるんですよね。運命共同体みたいな感じでやれてます」と本山さんは笑いながら教えてくれました。

みんなが働いて幸せになれる職場にしたい

本山農園では「同じ山に登る」というスローガンを掲げ、多種多様な人達が共に働き、自己実現することを目指しています。

その理由について本山さんは、「僕自身がポンコツなんですよ。ただおしゃべりで、人当たりがいいだけなんです。その代わり僕はそれを認めている。みんなの力がなくては本山農場はなしえられない。だから、みんがうちで働いて幸せになれる農場にしたいんです」。

「昔よりも良くなってはきていますが、農業は雨の日の作業や収穫時期の残業など大変な世界。だから、働いている時だけはストレスが少ないように、変なプレッシャーをかけて「もっと働け!」とか言うのは絶対にやりたくないんです。みんなで一緒に進んで行こうよ、という。だから登山と同じで「同じ山に登る」をスローガンにしているんです」。

しかし、農地が拡大するにつれ従業員も増えてきている中で、問題はないのだろうか?
「いまは規模も大きくなってきているので、みんながバラバラの山に登っている感じなんですが、目指すべき頂点はひとつなんですよ。そこを目指してみんなで行こうよという気持ちをひとつにしています」。

さらに、「働いている人たちの人生を考えたときに、少しでも「本山農場で働いて良かった」と思ってもらいたいので、自分の思い描いている本当の夢をうちで実現できないかなと思っています」。

メンバーの中には、青年海外協力隊を目指して経験を積み転職した方や、オーガニックファームをやるために経験を積んでいる方もいるそうで、「辞めてもなんだかんだ連絡をくれるんですよ」と話してくれた。

また、農作業に従事しながらもこれまでのスキルを活かして欲しいという本山さん。「僕らって農業しか知らないので、また違った視点から見ると、目から鱗みたいなアドバイスをもらえるんです」。

「うちではダブルワークもOKにしているので、その人の人生を充実させてほしい。農業自体も多様性が大事。経営者の頭の柔らかさや、働く人を考える意識が大切だと思います」と話してくれました。

「働いてくれる人がいないと農場はまわらない。辞めたらまた求人を出して募集すればいいかというと、それは違う。慣れている人は僕の指示もすぐ理解してくれるので、長く働いてくれるにはどうすればいいのかを考えることが大事なんです」。

「やってダメならその時考えればいい」大切なのは臆せずやってみること

新型コロナの影響で世の中が激変した時、本山さんは飲食店や宿泊業の方々を収穫期のアルバイトとして受け入れました。もちろん、全員農業は素人です。

「みんな「私たちでできるのかな」って不安に感じていたんですが、僕だって素人からやりましたし、臆することないですよ。1週間もやれば慣れますから」と伝えたそうです。

「やってダメならその時考えればいいですから」と優しく受け入れた本山さん、採用した10名は誰ひとり脱落することなく、半年間の作業を終えたそうです。

「僕は常日頃から農業を使って社会貢献ができないかと思っていて、この時にはじめて「役に立てたな」と実感しました。でも僕が一方的に支援したわけじゃなくて、僕も助けてもらったんです。農家は慢性的な人不足ですから」。

また、本山さんは「農福連携」という言葉が流行る前から障害者雇用ができないか考えていたそうです。

その理由を聞くと「人間が勝手に定めた社会の中で、なぜか障害者だけ分け隔てられていると思うんです。どうもそれが許せない部分があって、農業でどうにかできないかなと思ったんです。むしろ農業の可能性を僕たちが見せることで、世の中に広がればいいなって」。

農福連携をはじめたキッカケは奥様。もともと介護施設で働かれていた奥様に結婚を申し込んだ際、「本山農場でも障害者雇用をやりたい」とお願いされ、それ以来真剣に障害者雇用に取り組んできたそうです。

「僕は自分の命をしっかり燃やして使命を果たしたいと思ってて、その使命が何かっていうと、いかに世の中に尽くせることなのかと思っているんです。だから、もっと社会の役に立ちたいんですよ」。

収穫期を終えたらオンとオフを切り替え!仲間たちと分かちあう最高の瞬間

本山農園では、収穫期が終わると従業員全員で近くの焼肉屋を貸し切り、宴会を行うそうです。さらに、秋の玉ねぎの収穫が終わった際には、社員旅行として温泉に1泊旅行も。もちろん経費はすべて会社が負担しているそうです。

「ともに戦った戦友たちと要所要所で騒いでオンとオフを切り替える。その時に「やっぱりこの人たちと戦ってきてよかった」って思うんですよ。楽しいですよね。苦労も喜びも分かち合えるっていう。この農場を運営してきて良かったなって思うんです」。

もちろん、農業は良いことだけではありません。苦労して作った作物でも、価格は市場相場に左右されてしまいます。

本山農場でも「JAにも出荷しているので数年前にはピンチがあって、運転資金がまわらないことがありました。借金をすると銀行も融資をしてくれないので辛かったです」と話してくれました。

さらに、大雨や長雨の際は畑が冠水しないように注意したり、台風がきたときにはビニールハウスが飛ばされないように本山さん自ら補強作業をされているそうです。

「自分たちではどうしようもないことがあった時、自分の無力さで、打ちのめされます」と農業経営の厳しさを教えてくれた本山さん。

それでも、働いている人たちの給料の不払いは絶対に出さないように、取引先に頭をさげながらやりくりしてきたそうです。

農業は働く農園によってもまったく違います。さまざまな場所で働いてみてください

「農業は自分の力を試すことができる仕事です。自分のやる気をもって挑戦すれば、結果はすべて自分に返ってくる。すべてうまくいくわけがないので、毎回トライアンドエラーなんですよ。それが自分が生きているなと感じられるんです」。

「農業にちょっとでも興味あるならぜひ挑戦してみてください。農業って敷居が高いイメージがありますが、百聞は一見にしかず。さらに、働く農園によってもまったく違うんです。ひとつの農家で決めるのではなく、複数の農家さんで働いてみてください」。

株式会社本山農場

北海道上川郡美瑛町北海道上川郡美瑛町字美沢早崎
トマト、かぼちゃ、ブロッコリー、アスパラガス、玉ねぎ、てんさい、ニンニク

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