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インタビュー 葉茎菜 野菜
更新日:2023.08.02

「人と繋がり、地域と繋がりながら美瑛の未来を描きたい」 大波農園 大波太郎さん

北海道のほぼ中央に位置する美瑛町。なだらかな丘陵地帯が広がり、牧場や花畑が織りなす「パッチワーク」のような風光明媚な景色を求め、毎年国内外から多くの人が訪れる観光の町です。

農業が基幹産業で、十勝岳連峰から流れる良質な水源と朝夕での寒暖差が大きい気候を活かし、様々な農作物が生産されています。現在では400軒ほどの農家さんがこの土地で農業を営んでいらっしゃいます。

また農家さんの紡ぐ日々の営みが、美瑛の観光資源の一つである農村風景に直接結びつくことから、「観光」と「農業」が密接に繋がっている町でもあります。

この土地で代々農家の家に生まれた大波農園3代目:大波太郎さんに、農業と共に生きていくこと、そして「職業」としての農業の魅力について伺いました。

「高校卒業後に海外に農業研修へ」その経験がもたらした変化とは

「最初は両親がやっていた農業を漠然と引き継いだというのが正直なところ。今年39になる年齢を迎え、ようやく地に足をつけて農業をもっとやりたい!やらなくてはいけない!と思えてきたところなんです」と気さくな笑顔を覗かせながら答えてくれた大波さん。

就農のタイミングを伺うと「実は高校を卒業してどうしようかなぁと悩んでいた時に両親に勧められ、国際農業交流協会を通じてアメリカへ2年、農業研修にいきました」と意外な経緯を明かしてくれました。

「19歳から2年間、シアトルでの語学研修を中心にカリフォルニアやコロラドの農園でリンゴのもぎ取りや、いちごの苗の収穫を学びました。当時は若かったですし、遊びにいきたいという思いもありました」といいます。

その後22歳で帰国したものの、まだ海外に未練があった大波さんは再びニュージーランドへ海外研修に行くことに。「玉ねぎ農家ではトラクター作業をメインに学びました。そのほか芋農家、ズッキーニ農家にも行きました。ズッキーニ農家ではひたすらマルチングを剥がすという作業を担当しましたがそれが一番大変で印象に残っています!」と必死だった20代前半を振り返りました。

帰国後、24歳でご実家の大浪農園にて本格的に就農しましたが、海外での「大規模農業」や「効率重視」の農法を経験した影響は大きかったといいます。なぜこの作業をしなくてはならないんだろう?と次第に従来の農業に疑問を抱き、やり方を変えてみようと思い始めたとか。

「でも『昔からこうしてきたから』という意見に押し切られることもありました」と話します。

「本格的に変えていこうと思ったきっかけは?」との問いに「このやり方にしたほうが自分達の作業も楽になるよね、良いことがあるよね、という視点を持ったことです。試行錯誤をしながら少しずつ変えていきました。失敗もたくさんしながらですが…」

農業は工夫しながら自分なりのやり方を追求していけるところが魅力の一つ。大波さんの海外での経験が新たな変化へ繋がったことは確かなようです。

 予期せぬハプニングと挑戦の日々

現在大波農園の農場で栽培、販売する野菜は幻のグリーンアスパラ「ラスノーブル」と、オリジナルブランドとうもろこし「風が吹かさった」。特に「ラスノーブル」はメディアにも取り上げられ、収穫時期になると待ち望んでいた方々から多くの注文が入るほどの人気商品です。これらの商品はECサイトを通じて全国へ作物を届けていますが、ネット販売を始めたのは大波さんの代からだとか。

「最初植えた白いとうもろこしに隣の黄色いとうもろこしの花粉が飛び、白と黄色のミックスのとうもろこしが出来上がったんです。品質に問題はなかったのですが、規定により農協に出せなくなってしまって」と予期せぬハプニングから思いもよらないとうもろこしが出来たと話します。

「でも途方に暮れるわけにもいかないので、直接販売する場所を見つけ、まずは対面でひたすら売ることにしました。大変なことばかりでしたが、自分たちが一生懸命作ったとうもろこしの品質には自信がありました」

その後周りの友人知人からの勧めもあり、ネット販売へ挑戦することに。

「友人や周りの農家仲間の後押しもあり、このとうもろこしの個性を活かしてインターネット販売に挑戦してみようと思いました。もちろん、始めた当初は思うように売れ行きが伸びなかったのですが、友人の写真家のネットワークを通じて拡散してもらい、次第にお客様の数も増えていきました」

壁が立ちはだかった時、いつも助けてくれたのは周りの人々だったとか。

農業のやりがいは?と伺うと「お客様が美味しい!と喜んでくださること」だと即答。「SNSで美味しいとシェアしてくれたり、応援してくださったり、皆さんの温かい気持ちが本当に励みになるし、とても嬉しいです」

「地域のことを考えながら一緒に発展していきたい」美瑛の町の未来を見据えて

34歳でご両親から経営を引き継ぎ、収支管理を含む全ての責任を自分で持つようになってから、少しずつ農業へのビジョンが明確になっていったという大波さん。

「観光業が盛んな美瑛で農業を続けていくことを考えた時、自分だけでなくやはり地域と連携をとり、共に発展していかなくてはならない」と改めて感じたといいます。「最近やっと農業をしながら地域の役にも立っていることを感じられるようになってきた」とも。

実は美瑛町では美しい景観を写真に納めようと、観光客が農地に立ち入る「観光公害」が後を絶たなかったとか。訪れる人々にとって「写真映え」する景観は自分たちにとっては大切な農地。

そこで自分たち農家側の思いを発信するプロジェクト「ブラウマンの空庭」が発足。畑への立ち入りを一方的に規制するのではなく、実態を知ってもらうことで観光客に理解を求め共生していくことを目的に活動する団体です。

メンバーでもある大波さんは「美瑛町の農業を守っていくには、街全体でそのメッセージを発信していくことが必須」だと感じたといいます。

「農家はもともと閉鎖的でなかなかうまく自分達のことを発信できなかったと思います。でもせっかくなら来ていただく方に、僕たち農家側から現状や苦労を発信し、伝えることでご理解いただき、両者が気持ちよく過ごせる環境を目指したい。それが結果として、地域活性化につながると感じた」といいます。

「最近では応援してくださる方々が増えてきて嬉しく思います。人との繋がりが前向きな力になると感じています」と、ここでもまた人と繋がる喜びを伸びやかに話してくれました。

「まずは気楽に!」農業をこれから志すみなさんにメッセージ

「肩肘張らずに、まずやってみよう!でいいんじゃないですかね!!」と笑い飛ばした大波さん。自身もそうであったように、あまり気構えずにまず挑戦してみることをオススメしてくれました。

「農業をしていく中で、徐々に色々な方との付き合いができたり、地域の行事を通じて土地の人と仲良くなったりするものですから…やってから考えたっていいと思いますよ。まずチャレンジしてみてください!」

また最後に、生まれ育ったこの美瑛の土地に対する想いも語っていただきました。

「美瑛は綺麗な風景がたくさんあるけれど、この土地は行政や土地の人々が作り上げてきた生き様の集大成です。代々の積み重ねがあって今がある、これをどこか頭の片隅において観光にいらしてくれると嬉しいです!僕たちももっともっと美瑛を盛り上げていきたいですし、遊びに来てくださる方々にももっと農業のことも知ってもらいたいです!」

大波農場

北海道上川郡美瑛町新星第5
アスパラガス

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