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インタビュー 畜産 酪農
更新日:2023.11.06

「命の誕生に立ち会う」こととは。正解がないからこその葛藤とやりがい

株式会社ファームズ千代田 和牛繁殖主任 奈良紗莉那さん(25)

北海道美瑛町。広大な自然に囲まれた「ファームズ千代田」は和牛の繁殖から肥育まで一貫生産を行う数少ない牧場の一つ。豊かな環境と良質な飼料で大切に育てられた「びえい和牛」と「ちとせ和牛」はファームズ千代田のブランド黒毛和牛として人気を博しています。

旭川の農業高校の畜産科を卒業後、株式会社ファームズ千代田に新卒で入社した奈良紗莉那(25)さんに、ここでのお仕事について伺いました。

「もともと小さい頃から動物が好きで、動物に関わる仕事に就きたかった」

「もともと小さい頃から動物が好きだったので自然と動物に関わる仕事に就こうと思いました」と酪農へ進むきっかけは至極シンプル。

農業高校の専攻課程でホルスタイン(乳牛)に触れるなかで動物の中でも特に「牛」への興味が高まったとか。現在入社8年目、「和牛繁殖主任」として昼夜命の現場に懸命に向き合っています。

毎日の主な仕事は、牛舎での牛のお世話から人工授精、出産の立会い、子牛の健康管理など、多岐に渡ります。

「業務は毎朝7時、牛の餌やりから始まります。和牛って敏感な子が多いんですよ。臆病だったり神経質だったり、でも好奇心も持っていたり、もちろん人懐っこい子もいます。食事時になると寄ってきて匂いをかいだり、餌ですか?と言わんばかりに顔を前に出してきたり、愛着も湧きますし、可愛いです」とおっとりとした口調で話す奈良さん。幼少期から動物が好きだった少女の面影を彼女に感じることができます。25歳らしい純朴な笑顔をのぞかせます。

感覚を研ぎ澄ませて向き合う繁殖現場

一方で「繁殖現場では自分にも他人にも求めるものがどうしても大きくなってしまいますね」と繁殖の話題になると表情が一気に引き締まる奈良さん。

「朝の餌やりの後は、発情行動を見せた牛の情報を共有し、種付けのタイミングをスタッフで見計らいます。実際直腸に手を入れて子宮や卵巣に直接触れ、発情を多角的に判断し、発情が正式に確認されると人工授精を行います」

「でも毎回このタイミングでよかったのか、自問自答の繰り返しなんです。受精の適期に100%の正解はなく、最後は牛が正解を決めるのですが、その中で最大の受胎率を出さなくてはならない…毎日勉強です」と葛藤を覗かせます。

1日の中でこの判断を何度も繰り返しながら、和牛繁殖師として少しずつ感覚が研ぎ澄まされていきます。無事に受精した後は分娩までの285〜290日間、母牛の体調管理を徹底、気が抜けない日々が続きます。

牛舎の見回りも大切な業務の一つ。

母牛が落ち着きなく尻尾を上げ、従業員や外的刺激に敏感に反応しだすといよいよ陣痛が起きる兆候だとか。

「牛の出産は順調に進むことばかりではないんです」と奈良さん。

先に胎盤が剥がれていないか、向きは前足からきちんと生まれてくるのか。後ろ足から出てきてしまった場合、母牛との臍帯が生まれる前に切れてしまうと子牛が死んでしまうリスクがあるゆえ、母牛の力みに合わせて引っ張らなくてはならない、など。

「一刻を争う状況を瞬時に察知し、判断を重ねていきます」

やりがいは?命の誕生に立ち会う瞬間の想い

この仕事について良かったと思う瞬間は?との問いに「直面する命の誕生現場は本当に壮大です」と奈良さんは目を輝かて真っ直ぐに答えてくれました。

「無事に出産を終え、誰から教えられたわけでもないのに母牛が生まれたての子牛を舐めている光景を見ると本当に感動します。神秘的で、達成感に溢れる瞬間です」

一方で、生死に直に触れる現場ならではジレンマも。

「もう少し早く異変に気がついてあげられたら…と何度も悔しい思いをしてきました。正直精神的にきつい時もありましたが、散ってしまった命を無駄にしないために今後どうしたらいいのか、次生まれてくる子たちにどう生かしていけばいいのか、未来へと転換していくことで途切れそうな気持ちを繋いでいます」

体力勝負の日々。その向こうに見据えるビジョンとは?

奈良さんにオフの日の過ごし方を伺うと「ずっと、ずっと、寝ています」と笑いながら教えてくれました。体も頭もフル稼働の業務のあと、束の間彼女を癒すのは睡眠だというのも頷けます。

そんな体力勝負の日々

将来のビジョンについて伺うと「現時点での自分の人工授精の受胎率に納得がいってないんです。もっともっと場数を踏んであげていきたい。さらに受精卵移植師の資格取得も挑戦してみたい」としっかりと目標を語ってくれました。

酪農の世界に、ぜひ!

最後に、酪農に興味のある皆様にメッセージをいただきました。

「牧場での業務は重労働と思われますし、正直大変ではあります。でも向き合うのは生き物です。大変以上のやりがいや感動に日々溢れています!おすすめです!」

正解がないからこその葛藤と、勉強の日々。それを乗り越えた時に見える景色。そこに大きな喜びが詰まっている、そう奈良さんは教えてくれました。

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