
美瑛町の北瑛地区には「パッチワークの丘」として有名な丘陵地帯が広がり、毎年たくさんの観光客が国内外から押し寄せます。
この北瑛地区で農業を営む「農事組合法人浦島農場」は、3軒の農家さんが共同で経営し、ジャガイ、玉ねぎ、ビート、小麦、大豆、そばなど、さまざまな作物を育てています。
そんな浦島農場で働く浦島匡貴(まさき)さんは、農家の5代目として父親の後を継ぎ、農家の道へ進まれました。
「小さい頃から家業を手伝っていた」という浦島さんですが、農家としての一面を持ちながら、ウィンタースポーツのインストラクターとしての側面も持っています。
仕事だけでなく、趣味や家族サービスの時間も大切にしている浦島さんに、農業の魅力を伺いました。
目次
ウィンタースポーツに熱中していた20代前半。25歳で農家の道へ

「昔から農業を手伝っていたので、いずれやるんだろうなとは思っていました」。浦島さんが農業の道に進んだのは、25歳の時。
農家の5代目として育ち、中学卒業後は旭川農業高等学校へ進学。その後、拓殖大学北海道短期大学に入学して、農家一直線のキャリアを歩んでいた浦島さん。
しかし、大学卒後そのまま農家になることはせずに、家業を手伝いながら、農協の施設などさまざまな仕事をして、お金を貯めたそうです。
「ウィンタースポーツが好きで、いろんな仕事をしながらお金を貯めて、冬はウィンタースポーツをやっていました」。
しかし、転機が訪れたのは25歳の時。
「25歳で結婚したんです。その時に、競技者としてのウィンタースポーツは辞めて、インストラクターになろうと思いました。そこで考えたら、農業ってちょうどよかったんです。冬は雪が降って農作業はできないし、その期間インストラクターならできるなって」。
現在でもインストラクターとして活動している浦島さんは、休日には家族と一緒にスキーやスノーボードを楽しんでいるそうです。
人間みたいに健康で太くてデカい苗を作ってます!

時期にもよりますが、浦島さんの農作業は朝7時くらいからはじまるそうです。「植え付けや畑の管理を行い、その後、畑の周りや農機具をキレイにしたり、除草作業を行ったりしています」。
こういった管理作業の時期は、技術の進歩もあって、比較的時間に余裕が持てるそうですが、収穫期などは、夜通しで作業をすることもあるそうです。
「悪天候がなければ、だいたい日が沈むくらいの時間には、帰宅しています」。
その中で、浦島さんに仕事のやりがいについて聞いてみたところ、「玉ねぎの育苗ですね。その時期が一番手間暇をかけています。天候との勝負なので、一番こだわっています。良い苗というのは人間と同じで、健康体であることなんです。健康的な肌(色)で、太くて、デカい。そういう苗をつくるために、努力しています」と教えてくれました。
プライベートの時間も大切にしたい!浦島さんが感じる農家のメリット

浦島さんは、農業の魅力について「時間」だと教えてくれました。
農繁期である春〜秋にかけては多忙な毎日を過ごしていますが、冬は仕事がなくなるため、家族と一緒に過ごす時間が増えるそうです。
また、農繁期の時期も、植え付けから収穫までの間は管理作業がメインになるので、自分の自由な時間がつくれるとのこと。
さらに、浦島さんは圃場の一角で無農薬栽培にも挑戦中。
「自分が食べたい野菜を中心に、無農薬栽培をやっています。そこで育てた作物を家族が「おいしい」と言って食べてくれたときには、すごく嬉しいんです。とくに子供たちが野菜好きなので、喜ぶ顔が見れるのは幸せです」。
いつか、自分の作った作物で自給自足をしてみたいという浦島さん。無農薬栽培でうまくいった作物は、浦島農園でも作付けしてみるなど、本業にもその経験を活かしていました。
「農家になりたての頃は親子関係に悩みました」。農業をはじめたころの苦労とは

農家の後継ぎとして育ち、25歳で農家になった浦島さん。農業高校、農業系の大学を進み、順風満帆にキャリアを積んできたように思えますが、「農家になって初めの頃は、親子関係に悩みました」と教えてくれました。
「親世代の農家は完璧を求める。それにうちは農事組合法人で規模も大きいので、父親も責任がある立場だったんです」。
「周りの同世代の農家も、当時は同じようなことで親とケンカをしていましたが、僕は親に言われたことに言い返したりしませんでした。自分が努力して成長すればいいんだと思ったんです」。
こうして父親からも周りからも信頼されるようになった浦島さん。現在では新しい目標も見えてきたそうです。
「北瑛地区には景色がキレイな場所あり、観光客もたくさん来るんです。だから、その人たちに僕たちの姿を見てもらって、農家のイメージを変えたいと思ってます。農業って汚いとかキツいとか、そういうイメージがあるじゃないですか。でも、僕たちがカッコいい農家の姿を観光客の人に見せることで、そのイメージを変えていけるんじゃないかと思うんです」。
農業は家族がいる人にとっては最高の仕事です

「うちの農場は自然に囲まれていて、景色がとてもキレイなので、すごく癒されるんです。サラリーマンと比べたら自然と触れ合える仕事なので、自然が好きな人にとってはいい仕事だと思います」。
農業に興味を持っている方へ、環境の良さを教えてくれた浦島さん。さらに、ご自身の経験をもとに、こう語ってくれました。
「農業の良いところは、家族と一緒にできることです。僕も休みの日は子供たちを畑に連れてきて、一緒に土いじりをしています。子供にとっては、土を触るだけでも楽しいんですよね。普通の仕事だと、職場に家族を連れてくるなんて、なかなかできないと思うんですが、農業はそれができるんです。お子さんがいる方にとっては、本当に良い仕事だと思いますよ」。
ご自身の経験をもとに、農業の魅力を教えてくれました。浦島さんのように、仕事も家族も大切にしたい方にとって、農業は最適な仕事なのかもしれません。